ショベルナイトは、80年代のゲームデザインに対する愛を形にしたゲームと言えます。しかし80年代のコンセプトの中には、現代では通用しなくなっている点があるのも事実です。特に、ジェンダーに関する考え方がそうでしょう。私たちは過去のプロジェクトにおけるいくつかの失敗を経て、ショベルナイトを後ろ向きでなく、よりインクルーシブであるようにしたいと考えました。それが、シールドナイトがショベルナイトと対等のパートナーであるようキャラクター設定した理由の一つです。それゆえ、彼女は単なる「囚われの姫君」ではなく、最後にはショベルナイトと肩を並べて戦うのです。

マンばっかりです…

しかしながら、そう決定した時点でショベルナイト本編のキャラクター構成(主要キャラクターの大半が男性です!)は確定していました。ここで80年代を振り返ると、当時はジェンダー面での表現の幅があまりなかったように思います。たとえばロックマンは、ほぼ完全に男の世界ですし、スーパーマリオブラザーズ3でさえ同様です。こうしたゲームに登場する女性キャラクターは、オマケ程度の扱いか、囚われの姫君でしかありません。私たちは、この課題にもっと上手く取り組みたいと考えましたが、すでにデザインは出来上がり、ゲームの製作は始まっていました。 かといって、「誰でも楽しめるゲーム」を謳いながら、世界人口の半分を無視するのは理屈に合いません! 幸いなことに、Kickstarterの出資モデルのおかげで「ボディスワップ」というオプションを用意することができました!

ボディスワップとは?

ボディスワップ(旧名ジェンダースワップ)の背景にあるコンセプトは、男性キャラクターが全員女性になり、女性キャラクターは男性になるということです。しかし開発チームの内外で検討した結果、単にジェンダーを入れ替える以上のことができるのではないかという結論に至りました。究極的に言えば、プレイヤーがカスタマイズしたいジェンダーのパターンは多岐に渡ります。しかし、ゲームの機能としてのバランスも取らなければなりません。そこで私たちは、この機能を以下のようにデザインしました。

主要キャラクターである、ショベルナイト、シールドナイト、エンチャントレス、ブラックナイト、ボクメツ騎士団の騎士たちについては、性別ごとの身体を用意しました。これは各キャラクターごとに変更可能なので、プレイヤーが自由に組み合わせることができます。最終的に、英語版では代名詞を切り替える仕組みも導入し、「her」で呼ばれる女性キャラクターが筋肉質な身体を持つことや、その逆も可能となりました! こうした設定は、以下のような簡単なメニューから変更できます。

ご覧のとおり、ここでは男性と女性のシンボルが採用されています。私たちはシンボルを使用するほうが、文字で書くよりも分かりやすいと考えました。このメニューはゲーム中にいつでも開けるので、最初に始めた時の設定にこだわる必要はありません!

こちらは英語版におけるテキストの例です。「Save Her」が「Save Him」に変更されています。(日本語を含む、英語以外の言語ではテキスト変更には対応しておりません)

基本的な機能は以上です。開発チームはジェンダー問題についてあまり精通していなかったため、こうしたゲームデザイン上の判断には少々悩みました。しかし私たちは、皆様のご意見に対して常に最善を尽くしたいと考えています。大切なのは、誰もが楽しめるということなのです!

ボディスワップをデザインする

さて、それでは楽しい話題――実際のデザインについての話に入りましょう! ボディスワップ機能の着想の一つになったのが、アニメ「アドベンチャータイム」で放送された「フィオナとケイク」というエピソードでした。これはまさしく、性別が入れ替わる話だったんですね。それを見た私たちは、新たに素敵なキャラクターデザインを生み出したいと思いました。そしてその情熱を、実行に移したのです!

とはいえ… 私たちは元のデザインを大変気に入っていましたので、ボディスワップを導入するからといって、あまり大きな変更は加えたくありませんでした。同時に、リボンやドレスといった安易なジェンダーシンボルを使って、ミズ・パックマンと同じ失敗を繰り返すのも論外です! 私たちはそれぞれのキャラクターに相応しい、新たなデザインを行う必要があったのです。そこで私たちは、以下のようなガイドラインを策定しました。

  • ボディスワップでは、元のデザインと全く同様に、ジェンダーが表現されていなければなりません。たとえば、プレイグナイトを初めて目にしたとき、その性別を把握するのは難しいでしょう。したがって、プレイグナイトの女性型ボディは、女性型だと分かりにくいものでなければなりません。一方で、ハンサムなプロペラナイトの女性型ボディは、セクシーな感じにしてもいいでしょう! それぞれのボディのデザインは、対になっている必要があるのです。
  • キャラクターは、たとえばショベルナイトがドレスを着るように、単に女装ないし男装しているように見えてはなりません。服装はごく自然で、何かの「別バージョン」に見えてはならないのです。
  • ボディスワップは、既存のキャラクターの性格にマッチしていなければなりません。何より、台詞はまったく同じで、ボス戦や挙動も同じでなければならないのです。
  • プレイ特性は、まったく同じでなければなりません! ボディスワップを行っても、当たり判定や挙動は同じです。つまり、キャラクターの大きさや形は元のデザインと変わらないのです。
  • どのキャラクターも、ピクセルアートの状態で判別できなければなりません。1人のキャラクターをピクセルで描くにあたっては、綺麗で見やすいように仕上げるだけでも膨大な回数の調整を繰り返します。ボディスワップの導入により、同じキャラクターに異なるデザインのボディを追加し、しかもそれと分かるように描き分けなければならない、という新たな挑戦が生まれました。これはもう本当に大変な作業でした!
  • どちらのバージョンも、同じようにカッコよくなければなりません!

さあ、解説とルールの説明はもう十分ですね! さっそくデザインを見てみましょう! それぞれ簡単に説明していきます。

キングナイト

まずは、ボクメツ騎士団のなかでも最初に生み出されたメンバー… キングナイトから見ていきましょう! キングナイトは、すべての自主ルールを試行し、時には曲げ、その限界を検討するのにうってつけのキャラクターでした。以下はその初期スケッチです。

「女王」というのが最も明確な方向性でしたし、私たちが設定した自主ルールの中に納まりそうでした。ドレスを着たキャラクターではありますが、キャラクターのテーマにも合っていますね。

 

こちらは、彼のキャラクター性や服装にまつわる試行錯誤です。上列の左から2番目のものは、少々オリジナル版に近すぎますね。右上のものはオリジナルと適度に似ていますが、もう少しキングナイトのおバカな性格を強調したかったので、下列にあるように、いくつかのパターンを検討しました。

キングナイト最終コンセプト: 

ここで、ようやくピクセル化の目途が立ちました。こちらがピクセル化の第一稿です:

これは素晴らしい出来でしたが、帽子と兜が私たちの決めたボディスワップの自主ルールから少し外れてしまっていました。元のキングナイトが新しい帽子をかぶっているだのように見えてしまうので、最終的なスプライトが完成するまで、もう少し試行錯誤を続けました!

このナルシストっぽさ!

このキャラクターに関しては、名前自体も「クイーンナイト」に変更する必要があると考えました。肩書きにあたる部分(キング/クイーン)がそれぞれのジェンダーを強く想起するためです。(こちらは英語版における仕様で、日本語版では名前は変わりません)

上の画像は、私たちが使っている開発ツールで表示した一例です。外側の枠は、他の物体と干渉する、いわゆる「あたり判定」の範囲です。青い枠はダメージを受ける際のあたり判定で、赤い枠はダメージを与えられるあたり判定です。こうした判定枠を統一することで、どちらのボディを選んでも100%同じプレイ感と楽しさを実現していること、お分かりいただけたでしょうか!

ショベルナイト

ショベルナイトについては、いくつかの基本的な着想から始めました。幸い顔をどうこうする必要はないので、ボディの体型を変えることで、手っ取り早く女性化することができます。

こちらはより実験的なデザインの一部です。金属製スカート、装甲の分割、丸みを増した肩甲などを含む、さまざまな調整が試みられました。元になったショベルナイトのデザインと比べると、女性バージョンは私たちが個性を出そうと苦労するほど、その魅力を失っていくようでした。

チェインメイルのスカートや長くなびく髪といった大きな変更を加えると、ショベルナイトが私たちの意図とかけ離れたキャラクターになってしまいます。最終的に我らが主人公のボディスワップバージョンは、当初のコンセプトに近いものになりました。体型を除けば変更されたのは鎧の側面部分だけで、人によっては違いに気づかないかもしれません。

変更点はごくわずかなものに留まったとはいえ、女性型ショベルナイトの最終デザインは満足のゆくものに仕上がりました。このゲームの主人公は、ジェンダーがどうであろうと一貫したインパクトをもつキャラクターにしたかったので、このデザインは目的を達したと言えます。

シールドナイト

シールドナイトに関しても、同じ基本原則、つまり鎧のシンプルさを保ちつつ体型を変えるという方法をとりました。この時もスカートのデザインを模索しましたが、やはり上手くいきませんでした!

こちらがシールドナイトの決定稿スケッチです。外見的な違いは、ショベルナイトとその女性型ボディよりも小さいように見えますね。よく見ると、胸甲の上部にあった金色の部分など鎧の装飾がいくつか無くなっています。また、より筋肉質に見えるように肩甲や兜も小さくなています。

女性型のシールドナイトは、非常に意志の強い冒険者でした。男性型バージョンの方も、同様の雰囲気をうまく再現できていると思います。

ブラックナイト

ブラックナイトのボディスワップでは、体型よりも鎧のデザインを重視しました。そこでシルエットに少し手を加えたのですが、この方向性を実現するにあたって肩甲は重要な要素でした。怖ろしげな外見を強調するために前掛け型の装甲が追加されており、胸甲に加えられた宝石は眼のように見えるようになっています! しかし、そういった点はあくまで飾りです。ブラックナイトの口が2つあるわけではありません!

最終的なデザインにはとても満足しています! 鎧は不気味ながら洗練されたもので、どちらのボディのブラックナイトも中性的な雰囲気をまとっています。

エンチャントレス

「エンチャンター」は初期に検討されたボディスワップコンセプトの一つで、ここから様々なデザイン上の原則が生み出されました! 最終的なデザインに行きつくまで、さまざまに迷走したキャラクターでもありました。

元のデザインは日本の伝統衣装である着物からインスパイアされたものでしたので、男性バージョンを作る際も、その方向性から始めました。しかし、これは本来のキャラクター特性をうまく反映したものにはなりませんでした。ゴツゴツとした侍のようなデザインになっていったからです。アート担当者の一人がスマッシュブラザーズでガノンドロフを愛用していたらしく、ご覧のとおり、それらしい冷徹で意地の悪いデザインになっていますね。

元のデザインから大きく異なったものになったのはエンチャンターが初めてでした。しかし、有無をいわさぬ冷酷なイメージはうまく引き継いでいます。

モールナイト

モールナイトの場合、もともと体型がオペラ歌手を想起させるため、そこから検討をはじめました。大きなブレイクスルーになったのは、モールナイトの頭に燃えている炎に手を加えると、髪の毛のようになるという発見でした。

そうなると本来の男性型モールナイトは、実はハゲなのでしょうか…? 何はさておき、元のデザインと比べて格段にややこしい作業になりましたが、私たちは何とかシンプルになるよう、全力を尽くしました。

しかし最終的には(女性のオペラ衣装が男性のものより複雑であるのと同様に)、鎧を中心に様々なパーツを付け加えることで落ちつきました。

プレイグナイト

もともとジェンダー面でいずれとも言えない姿をしているプレイグナイトに関しては、特に苦労しました。そこで2つのバージョンを見分けやすいよう、コスチュームを変更することにしたのです。

まず根底にあるのは、プレイグナイトがあまりファッションに熱心でないキャラクターだということです。目が覚めたら簡素な服を着て、一日中ずっと錬金術をやっているというイメージですね。

試行錯誤のなかで、フードを魔女の帽子に変えると可愛いなど、細かい部分での発見がありました。また、目をアーモンド形にしてクチバシ部分を短くする方法も試しましたが、こちらはイメージが今ひとつ合いませんでした。

フロストナイト

フロストナイトの場合、最も難しかったのは、同じ厚みと四角さを持つボディをどのように作るかという点でした。さきほどは当たり判定が重要だと述べましたが、その意味でフロストナイトには、ほとんどスペース上の余裕がありません。

当たり判定の話はさておき、本来のフロストナイトのデザインは、ストイックで巨大で、動かざる山のごとき彼の人格をとてもよく物語っていると思います。それを女性バージョンのボディでも再現する必要がありました。肩幅を広げるために、大きなショルダーパッドやアーマーを追加してみましたが、どれも後付け感が出てしまいました。そこでもっとシンプルなデザインを試してみたのですが、そうするとフロストナイトのキャラクター性が失われてしまいます。最終的な方向性に導いたのは、大きくて太いお下げ髪にするというアイデアでした。そうすれば女性的なポーズや姿勢を保ちつつ、巨大な当たり判定を実現できるのです!

男性ボディにあったスパイクつきのショルダーパッドは、女性ボディでは腕に移動しています。とにかくフロストナイトには苦労させられましたが、もしかするとボディスワップでは最も成功したデザインかもしれませんね!

プロペラナイト

男性としてのプロペラナイトは、自信に満ちたキャラクターです。色男(もしくは男の中の男)と言うこともできるでしょう。元のキャラクターが持っている風雅な男らしさと対応するように、女性型ボディでは曲線美や女性的な特徴を強調しています。

女性型のプロペラナイトは、男性的なプロペラナイトと同様に、さまざまなポーズをとっては自分のセクシーさを見せびらかそうとします! 他のキャラクターのボディスワップにおける、もっと奥ゆかしいアプローチと比べると、性格を強調することは容易でした。このデザインは最も簡単だったものの一つで、修正をほとんど必要としませんでした。

ご覧のとおりプロペラナイトのデザインは、男性型も女性型も、強調されたジェンダー表現になっています。当初のキャラクターをもとに対極的なデザインを作り出せたのは、楽しい体験でした。

スペクターナイト

当初から風になびく布をまとっているスペクターナイトについては、ボロボロながら象徴的な服、骨や頭蓋骨のようなモチーフをそのままに、より手の込んだドレスをデザインしようと考えました。しかし、いずれも男性型のデザインとの差別化が難しかったため、私たちはさらに一歩踏み込んで、日本の幽霊(映画「リング」に出てきた髪の長いアレ)をイメージした案をいくつか作りました。しかし結局、いずれの案も複雑すぎたり、あまりにも余計な印象を与えてしまうものでした。

女性型スペクターナイトの最終デザインは、ぼろぼろのドレスを受け継ぎつつ、そこかしこに骨の意匠をちりばめたものになっています。コンセプトアートを見ると男性型ボディよりも体格が若干大きく見えますが、ドレスとポーズでそう見えるだけで、実際には同じサイズです。ここでも、キャラクターが同じ表示スペースに収まっていることが最も重要です。

そして、下がその最終デザインです! このデザインは素晴らしいのですが、いつか「スペクターオブトーメント」の中で、下に着こんでいる鎧を見せたバージョンを見たいものです。また、武器を骨の鎌のようなものに変えてもカッコイイかもしれません。しかし、元々このキャラクターに込められた意図から、かけ離れたデザインにはしたくありませんでした。

マシンナイト

マシンナイトはとにかく小さなキャラクターですので、表現の余地が限られてしまいます。なにしろピクセルモデルがあまりにも小さいので、違いが出るかどうか心配したほどです! アニメーションのポーズを変えることで明確な効果を得られるかどうか試しましたが、やはりデザインを検討する必要があると分かりました。結局この仕事好きのキャラクターについてはデザインを10%程度まで変更しつつ、実用的なお下げ髪を2本追加することにしました。

ごくわずかな変更であったにも関わらず、このデザインは驚くほど上手くいきました! しかし、まだ何かが足りません。男性型マシンナイトのマスクには深い傷跡がありますので、女性型にも新たに同様の意匠を追加しようと考えました。そこで新しいマスクにボルトを追加し、過去に損傷を修復したような姿にしました。

しかしまあ… こうして2つのバージョンを並べてみると、可愛らしいメカ好きのカップルにしか見えませんね! ときには、最小限の変更こそが最も効果的なのです!

トレジャーナイト

トレジャーナイトに関しては、フロストナイトと同じ苦労がありました。同じ当たり判定の中で、サイズとシルエットを変えることなく女性型のボディを作らなければならなかったのです。そしてフロストナイト同様に、トレジャーナイトの再デザイン作業もとても楽しいものでした。トレジャーナイトの傲慢さも、しっかり表現しなければなりません。

まずは少しでもシルエットを大きくするために、背負っている酸素タンクを2本式にしました。これには90年代の映画「ロケッティア」における、2本式のジェットパックを参考にしています。男性型のトレジャーナイトは奇妙なボマージャケットを着ていますが、女性型はトレンチコートの方が自然な印象を受けます。シルエットがよりゴツくなったことを踏まえると、特にそうですね。基本的には、元のジャケットを細くしただけではあるのですが… またマスクについては元のデザインを引き継ぎたかったのですが、あまりにも頭でっかちで不格好なため、丸いデザインに変更しています。ただし、特徴的な頭頂部のフィンとグリルの形状は受け継いでいます。

この自信に満ちたポーズとウエストを締めたトレンチコートといういでたちは、どこかノワール映画に出てくる探偵を思わせますね! 私たちは、このデザインを大変気に入りました。女性型の方が重心が低くなっていますが、背中に背負ったタンクのおかげでピクセル画の仕様も維持できましたし、男性型のデザインとも整合性がとれました。

さて、これで全員ですね! 見逃しているキャラクターはいないはずですが… せっかくですので、新デザインの全員が集まった素晴らしいアートをご覧ください。いかがでしょうか!?

お楽しみください!

結論

ショベルナイトにおけるボディスワップ機能の開発プロセスに関して、ご不明の点やご意見がおありでしたらお知らせください。ゲームであれゲーム産業であれ、進歩の余地は常にあります。どんな人でも楽しめるようになれば、もっと良くなっていくことでしょう。私たちは、自らが正しい選択をしていることを、十分にオープンなプロセスをとっていることを、困難を直視し、より多くの人々にゲームと開発プロセスを公開できていることを願ってやみません。また、皆さんがボディスワップ機能を気に入っていただき、お気に入りのキャラクターを違った感覚で見ていただければ幸いです。願わくば、より多くの人々に、笑顔をもたらすことができますように!

ボーナス!

公式にボディスワップに対応したのは主要キャラクターだけですが、つい他のキャラクターでも楽しんでしまいました…!