ヨットクラブゲームズのファンの皆さんは、すでにお気づきかもしれませんが、私たちが手がけてきたゲームには、ある奇妙な傾向があります。それは特定のボタンに、プレイの面でも、ストーリーの面でもあまり意味のない… ときには全く意味のない機能を割り当てているということです。これは、シンプルなプレイとシステムを目指す私たちの哲学と、矛盾しているように思えます。プレイに貢献するわけでもなく、むしろ混乱を招きかねない機能など、いったい誰が好き好んで採用するでしょうか? 「ゲームはシンプルでなきゃダメだ! マリオを見れば分かるだろ! いったい誰がそんなアホなことを考えついたんだ!?」なんて声が聞こえてきそうです。そこで今回は、なぜ私たちがゲームに無駄なアクションを組み込んだのか、そして過去の作品に実装されていた奇妙で楽しい仕掛けについてお話ししましょう。この手のイタズラは、どんなゲームにも仕掛けられるわけではありません。しかし私たちにとっては欠かせない、ちょっとしたフレーバー要素なのです!

ふしぎなブロビー – ハグするボタン

無駄なアクション操作を最初に組み込んだのは、2008年にWii向けに発売された「ふしぎなブロビー」(A Boy and His Blob, 日本未発売)が最初です。この手書き風の2Dジャンプアクションゲームは、ディズニーやスタジオジブリ的な感覚を持ったゲームとして制作されたもので、男の子とブロビー(ゼリー状の生物)の心温まる交流がテーマになっています。ブロビーは色々と便利なものに変身する能力を持っていて、両者が協力しなければ先には進めません。そして、このゲームで十字ボタンの上を押すと、少年は膝をついてブロビーを抱きしめるのですが、これは本当にプレイヤーの心を温めるだけのアクションなのです。おそらく多くのプレイヤーは、このハグボタンの素晴らしさをすぐに理解してくれたと思います。「ギアーズ・オブ・ウォー」や「ゴッド・オブ・ウォー」といった熾烈な戦闘ゲームが絶大な人気を誇っていた当時のゲーム市場において、ハグできるゲームが登場したことは、まさに驚くべき事態でした。この驚きについて記事がいくつも書かれたほどです! ご覧になったことのない方は、以下の動画から前述のかわいい(ただしプレイ上は意味のない)アクションをご覧ください。

*「ふしぎなブロビー」(A Boy and His Blob, Wii)はファミコン版「ふしぎなブロビー -ブロバニアの危機-」をベースに新たにリイマジニングしたゲーム

「ふしぎなブロビー」におけるハグ機能は、プレイにこれといった影響を与えるアクションではありませんが、プレイヤーをゲーム世界に感情移入させるために導入されました。 操作キャラクターである「少年」と「ブロビー」が紡ぎだす小さな物語に、ハグという行為を通じて温かいトーンを与えているのです。また、これには二者間の共生関係を強調する意図もあり、実際のプレイ内容もそれを反映したものになっています。私たちは、ブロビーを犬のようなペット的存在としてプレイヤーに理解してもらうことが重要だと考えました。このゲームのAIはあまり賢明ではありませんでしたが、相棒がどのように行動するかは想像がつきます。相手はいつも思い通りに動いてくれるとは限りませんが、互いを気遣い理解しようと努力することで、障害を乗り越えられるようになっているのです。つまり、ハグには(イエスかノーかという)デジタルな関係さえ癒す力があるわけですね! そしてプレイヤーが感情移入すれば、それだけプレイに熱が入り、作品との一体感も高まります。

ストーリー、アート、音楽、効果音といった要素はプレイに直接貢献するだけでなく、プレイヤーの熱意を高める手段にもなります。このテクニックは、場合によってはプレイそのものを磨き上げるのと同じぐらい重要となる場合があるのです。プレイヤーがプレイシステム以外の部分を通じてゲームに愛着を持てば、そのゲームの気に入らない部分も許せるようになるでしょうし、プレイする時間が長くなれば、それだけ内容への理解や愛着が深まります。というわけで、これほど重要なアクションに、ボタンを割り当てない道理はないでしょう!

ダブルドラゴンネオン – ハイタッチアクション

2つ目の例は、私たちのチームが開発に協力した「ダブルドラゴンネオン」です。このブッ飛んだ80年代風の協力プレイ型横スクロールルアクションゲームには、いろいろな意味で使えないアクションが、いくつも用意されています。ハイタッチ(協力プレイゲームとしては…実は悪くない演出です)のほか、跪いたり押したり(基本的に無意味です)、ビートボックスやダンスもできます(こちらは全く無意味です)。詳しくは以下の動画をご覧ください。

なぜ、これほど多くのアクションが用意されているのでしょうか? それは「ダブルドラゴンネオン」がとびきりイカれたゲームであり、その一環として様々なアクションが用意されているからです。プレイヤーはこうしたアクションを通じて、80年代、未熟さ、友達とのプレイ、友達をからかう楽しさ、悪ふざけ、間抜けさ、コメディ性、楽しい時間といった、このゲームの本質を理解するわけですね。80年代ネタを山ほど詰め込み、2時間かけて不死のスーパー宇宙亡霊を追い詰めるといったムチャクチャな企画は、プレイヤーが作品のノリを理解してくれなければ成立しません。それはもう「What the Butt!?(なんだってー!?)」という主人公の台詞に集約されていますね。プレイヤーをアホゲーが楽しめる精神状態まで持っていくのは基本的にとても難しいのですが、こうしたアクションがあれば、プレイヤーはその意図を汲み取れるだけでなく、おバカな展開を楽しめるようになります。「ダブルドラゴンネオン」はプレイヤーに対して、お前もバカになれと誘っているわけですね。このゲームを楽しむにも理解するにも、バカになることが重要なのです。これがなかったら、「ダブルドラゴンネオン」がこれほど愛されることはなかったでしょう。

ショベルナイトのダンス

ここまで読み進めながら、あなたはずっと「ショベルナイトには、何か無駄なアクションがあったっけ?」と考えていませんでしたか? もったいぶらずに真相をお伝えしましょう。ショベルナイトの無駄アクションは、これです!

え? どこか、って? 見えませんか!? そんなはずはありません! しっかり見てください! そこまで言うなら、ズームしてみましょう。

ほら! しゃがんでますよね? 十字ボタンの下を押すと、ショベルナイトは本当に少しだけしゃがむんです。プレイ上は何の役にも立ちませんし、敵の攻撃を回避できるわけでもありませんが… とにかく自由に使えるアクションです。これはダンスのようにも見えるので、思いっきり早く連打してみると面白いですよ! 前述した2つの例をお読みになった皆さんなら、私たちがこの無駄なアクションを追加した理由はご想像がつくかと思います。しゃがむことでNPCと身長を合わせてみたり、会話が退屈になった時に激しく屈伸したりといったユーモアのある使い方ができますし、見た目にもカワイイです。また、ゲーム自体がちょっと間抜けな感じになって深刻さを和らげてくれます。ダンスにだって使えます! でも、一番大切なのは… 昔の任天堂ゲームがそうだったように、ゲームの「オモチャ」としての側面を思い出させてくれることなのです。

それを「ゲーム感覚」と呼ぶ方も多いのですが、おそらく実際にはこういうことでしょう… ファミコン時代のマリオシリーズは、ステージ、世界観、ボス、敵、背景といったデザイン要素がなくても、プレイヤーは楽しめたのではないでしょうか? オモチャは手に取った瞬間から楽しくなるものですが、ああいったシンプルなゲームも同様に、コントローラを握った瞬間から楽しいのです。キャラクターを歩き回らせて、その反応を見る… たとえばマリオのジャンプから慣性を感じ、ロックマンの足が地面にグリップしているのを感じ、彼らがどこに向かって何と出会うのかを想像する。楽しいですよね。ショベルナイトの屈伸ダンスにも、キャラクターで遊ぶ楽しさを思い出させる意図があります。プレイヤーはオモチャで遊んでいるように、ショベルナイトをしゃがませることができるのです。皆さんも、ショベルナイトを躍らせてみてください! 彼はあなたの思い通りに動いてくれますし、そうやって楽しんでこそのゲームです。そもそも踊るという行為は自分の身体を自在に動かして楽しむものですので、オモチャで遊ぶこととよく似ているのです。

どうやって遊べばいいの?

楽しむことを思い出して!

ショベルナイトのプレイ感覚については、これまでにも「ずっと忘れていた子供の頃のワクワク感を思い出した」という嬉しい賛辞を頂いています。それはおそらく、ショベルナイトに託したオモチャ的な楽しさによるものなのでしょう。優れたオモチャがそうであるように、皆さんが、ショベルナイトからも豊かな想像性や楽しさを感じることを、そして1本のゲームとして心から楽しんでいただけることを、私たちは願ってやみません。ゲームは楽しいのが一番です! 皆さんも、よかったら色々なゲームに存在する「無駄なアクション」を探してみてくださいね。某MMOにおけるジャンプや「マリオカート」のクラクション、「ワンダと巨像」で馬をナデナデする操作や「VANQUISH」の喫煙ボタンなど、無駄アクションがゲーム体験に深みを与えている例は、数え切れないほどあります。 あなたのお気に入りの無駄アクションはありますか? もしよかったらコメント欄で教えてください!