以前に「すれちがい闘技場」のしくみについて投稿しましたが、お読みいただけましたでしょうか?まだの方は、こちらから、ぜひご一読ください。今回は、このシステムがどのようにデザインされたかについてお伝えします。元ネタを知ったら、きっとビックリしますよ!

初期のアイデア

3DS独自の「すれちがい通信」機能の使用を決めた時から、私たちは、ありとあらゆるゲームコンセプトを模索しました。しかしその大半は、プレイする前に説明が山ほど必要であったり、実装するにはユニークな内容が多すぎたり、そもそもプレイ形態がショベルナイトの世界観にそぐわなかったりしました。

たとえば、私たちが素晴らしいと考えていたアイデアの一つに、プレイヤーがステージ内の部屋にお金やアイテムを隠せる、というものがありました。そして「すれちがい通信」によって、別のプレイヤーのゲーム内の、まったく同じ場所に出現させるというわけです。受信側のプレイヤーをあざむき、思いもよらぬ場所に宝を隠すというアイデアは、当初とても面白いと思えました。また、すれちがい通信を利用して隠された宝を探し出すという発想も、私たちの考えるプレイ形態に合っていたのです。一方で私たちは、同じステージを何度も繰り返しプレイさせることは避けたい(むしろニューゲーム+でゲーム全体を繰り返し遊んでほしい)とも考えていましたし、このシステムではクリア済みのステージに宝が隠されている確率が高くなってしまうことも予想されました。結局ゲームをクリアしてしまえば、この要素はそれほど面白いものにはならないでしょう。こうしたアイデアの数々は、いずれも没になるか、今後のために温存されました。

最終的なアイデアは、使い道を探していた既存のモジュールが元になっています。この斬新なシステムによって、プレイヤーはゲームをクリアした後も、引き続きやり込みたくなるわけです。そして信じていただけるかどうかは分かりませんが、実はこのアイデアは、他ならぬボードゲーム「Scrabble」のFacebook版から生まれたものでした。

ターン制

同時プレイではないマルチプレイがカギ!

Facebookゲームが出現しはじめた当時、どのゲームもそれほど面白そうには思えませんでしたが、唯一私たちの目に留まったのが「Scrabble」でした。このゲームはFacebookというプラットフォームを実にうまく利用した、面白いプレイ要素を持っていたのです。それは、リアルタイムにプレイする必要がない、ということです! もちろん、これまでもターン制のビデオゲームは少なからず存在しましたが、外国にいる対戦相手と1ターンに数日をかけるようなゲームは前代未聞でした。このシステムなら複数のゲームを同時に、しかも自分のペースでプレイできるわけです。これは素晴らしいアイデアで、ニューヨークの公園でチェス名人が、20人の相手と同時にプレイするような感覚です。

多くのクリエイティブな開発プロセスがそうであるように、このコンセプトも何かの役に立つだろうと仕舞い込んでいました。しかし新しいアイデアは、しばしば複数の古いアイデアを独創的に組み合わせた結果であったりします。このコンセプトの場合、私たちは、「Scrabble」のアイデアをどうすればアクションゲーム向けにできるか、と考えました。もっとライブ感のある楽しい対戦にできれば、あるいは…?

すれちがい宇宙

当時私たちは、2人のプレイヤーがそれぞれの動きを短時間だけ記録するような対戦ゲームを作りたいと考えていました。記録した動きを同時に再生することで、高速のアクションを展開する仕組みです。各プレイヤーは次の数秒分のアクションを同時または別々に記録し、双方が記録を終えた時点で再生し、成り行きを見守るのです。いわば、疑似リアルタイムといったところでしょうか。

次の数秒分の動きを決めるという点で考えると(ポーズ中に次の数秒間の動きを記録、そして記録した動きを再生して、両プレイヤーがそれぞれの画面で自キャラの戦いを観戦する)、Wii U向けのアイデアだったかもしれません。また、このアイデアならオンラインでプレイすることも… それこそScrabbleのように長い時間をかけてプレイすることも可能になります。

相手の行動が見えないのにプレイするというのは、どうにもバカげて聴こえます。実際、かなりカオスで間抜けなことになるはずです。その一方で、このシステムなら次の一手をあらかじめ時間をかけて考えることができますし、ピリピリしながらプレイすることもなくなるでしょう。それにオンラインなら、50回戦を一度にプレイすることだってできます!

私たちはこのアイデアを大変気に入りましたが、プレイヤーに楽しんでもらうのは難しいとも考えました。この仕組みがうまく働くケースがあるとすれば、すでに一定の知名度を得ているシリーズのスピンオフ作品である場合だけでしょう。単独の格闘ゲームにすると登場キャラを覚えるだけで大変ですし、ただでさえ特殊なゲームが一層ややこしくなってしまいます。しかし、既存のゲームの追加要素として導入するのであれば、プレイヤーは基本的なゲーム要素を既に理解しているわけですから、ターン制のシステムを追加しても敷居は高くならないはずです。

もうお分かりかと思いますが、すれちがい闘技場は、このアイデアが基になっています。また最初にちょっと触れましたが、記録した動きを再生して戦わせる際に必要なプログラムは、すでに存在していました。デバッグやプレイテストのために、入力を記録するモジュールを作成していたんですね。

記録した操作を10倍速で再生した例

デザインの具体化

ターン制であることを考えると、この2D格闘ゲームのアイデアは「すれちがい通信」にうってつけでした。また、基本操作がシンプルなショベルナイトを操作キャラクターにすることで、2D格闘にありがちな複雑さを避けることができました。そしてアリーナ自体は、プレイヤーがゲームの操作に慣れた頃に出現させればいいのです。このバトルアリーナのアイデアこそ、私たちのゲームデザイン理念をポジティブに反映しつつ、しかも何度もプレイしたくなるような妙案でした。プレイヤーは新しいテクニックを試し、互いに学習し、そしてその経験をシングルプレイのストーリーモードに生かすこともできます。

マリオブラザーズの左右対称なステージ構成とコイン配置

アイデアを生み出すのは簡単ですが、大半は具体化していくなかでダメになってしまいます。私たちはこのシステムが何とか楽しいものになるよう、さまざまな検討を行いました。まず5秒ごとのラウンドで3戦勝負を行う仕組みですが、ラウンドの時間が長すぎるとデータの記録が退屈になってしまいます(また「すれちがい通信」では、マッチ全体を1度に記録するしかありません)。これを踏まえると、ただ戦うだけでは十分なインセンティブにはなりませんし、単に戦うだけでは、ショベルをデタラメに振り回すだけで終わってしまうかもしれません。

そこで導入されたのが、マリオブラザーズ風に宝石を集めるシステムです。宝石を集めることでも勝利できるわけですね! 宝石がなければ、双方のプレイヤーはマッチごとに突進するだけだったかもしれません。短いマッチで相手の動きの予想がしやすく、退屈なものになっていたでしょう。宝石は、見えない敵を攻撃することに戸惑うプレイヤーに別の選択肢を与え、移動目標となり、相手の位置を予想する手がかりにもなります。相手がどの瞬間にどの場所にいるかを想像できれば、より明確なタイミングで攻撃を行えるわけです。つまり、さまざまなシナリオや戦略を組み立てる余地があるわけですね。

戦略性を高めるために宝石を追加した後、私たちは、それをどのように配置すれば一貫性のあるステージ設計になるかを考え抜かなければなりませんでした。その際、すれちがい通信で出会った2人のプレイヤーがステージの左右に分かれた場合、どちらになっても同じ結果になるようにするには、どのようなステージにするかという問題が浮上しました。右側なり左側なりを自動的に決める方法もありますが、それでは戦略の幅が狭まってしまいますので、単純にステージを左右対称にしたのです。送信された自分のデータは対戦相手の画面右側に表示され、記録された動きを左右反転して再生するという仕組みです!

初期のマップ(左)は、現在のマップ(右)より行動の選択肢やルートが限られていました。

次のステップでは、上の画像のように、もっとも楽しくプレイできるようステージデザインの調整を行いました。左側が初期のデザインで、右側が最終デザインです。最初のアリーナは画面中央での戦闘を促すよう設計されましたが、少々促しすぎたと言えるかもしれません。なにしろプレイヤーにはほとんど選択肢がなく、結局は同じルートを移動するので、戦闘としてあまり面白いものではなく、サブウエポン(レリック)の独創的な使い道も生まれませんでした。また、プレイヤー同士の距離にも問題があり、大半の場合、中央でぶつかる頃に時間を使い切ってしまうという問題が発生しました。

右の画像では、ご覧のとおりいくつもの細かな変更が加えられています。プレイヤーには多くの選択肢が用意されており、以前のように中央で戦うことも(初期の案と違って上/中/下段が用意されています)、すぐ後ろの宝石を取ることもできます。大幅に増えた高低差を利用してサブウエポンを活用できるほか、プレイヤー同士の間隔も狭まっているため開始直後から接触する可能性もあります。また左右の足場もやや低くなり、飛び乗りやすくなりました。そして最後に5個以上の宝石を追加して拾いやすくしたことで、宝石を集める戦術がより現実的な選択肢になっています。

最終案!

この「すれちがい闘技場」のアイデアをさらに一歩進めて、コマ切れスタイルの2D格闘バージョンを作ることができたら楽しいかもしれません(1人のすれちがい用データを64人や、それ以上の数のプレイヤーデータとトーナメント形式で戦わせて、その対戦を観戦するとか… 熱いですよね!)。あるいは今後、このユニークなターン制アクションを、もっとクレイジーな方法で活用できるかもしれません。何はともあれ、現在の「すれちがい闘技場」をお楽しみ頂ければ幸いです。とっても面白いので、皆様にも気に入って頂けるはずです!

このささやかなゲーム要素に他のデベロッパーの方がインスピレーションを得て、入力記録モジュールのような小さなものを使って、まったく新しい「すれちがい」システムを生み出すことを、私たちは願ってやみません! もちろん、まだ作業中のゲーム要素もたくさんありますし、この記事もちょっと長くなってしまいましたね! ご意見やご感想、今後の記事で取り上げてもらいたい点などありましたら、ぜひぜひお知らせください。

ショベルナイトがやたらとショベルを空振りする様子は、実にまぬけです。ショベル騎士道も大変ですね!^^;

David D'Angelo

A dandy programmer for YCG.