先に欧米でリリースされたショベルナイトは、当初、任天堂Wii U、3DS、そしてPC(Steam/Humble Store)という3つのプラットフォームでリリースされました。しかし、ショベルナイトの別バージョンを作るのは、ボタンを押して済むような作業ではありません… 複数のプラットフォームでリリースするのは本当に大変なんです! どのデバイスも、それぞれにスペックや操作系が異なり、固有の問題があったり、必須条件や基本機能が違っていたりして、そうした要素をゲーム全体にわたって考慮する必要があるからです。また私たちは、ただ単にそのプラットフォームで動作するだけでなく、そのプラットフォームに馴染んだゲームにしたいと常に考えています。Wii U版のショベルナイトを開発する際も、もちろんそうでした。そう、当初からMiiverse機能の可能性を探っていたのです。

Miiverseについて

「New スーパーマリオブラザーズ U」では、プレイヤーがステージごとに感想を残すことができます。

Miiverseは基本的に、Twitterのようなショートメッセージ形式の、ゲームを題材としたソーシャルネットワーク機能です。大半のWii Uゲームでは、独自のMiiverseコミュニティを持っていますね。Miiverseにはあらゆるプレイヤーが集まりますが、プレイ中のゲームを終了することなく、テキストや絵やスクリーンショットを投稿できます! こうした投稿は、たいがい質問であったり感想であったり、ゲームのヒントであったり、笑える瞬間をとらえた画像であったり、ときには、驚くほど巧みなファンアートであったりもします。言うなれば、ゲームについて語れる楽しいフォーラムということですね!

「ゼルダの伝説 風のタクトHD」では、小規模ながら、ゼルダをテーマとするMiiverseポータルを持っています。

「New スーパーマリオブラザーズ U」では、クリアした時の嬉しさや、やられてしまった時の悔しさなど、プレイヤーに感想を残すよう促します。こうしたメッセージは自動的に別のプレイヤーの画面に表示され、うまくいけば体験を共有することに繋がります。

「Nintendo Land」では、全世界のプレイヤーからの投稿を集めてゲームロビーに表示することで、アミューズメントパークにいるかのような活気を再現しています。最近の例で挙げられるのは、「ゼルダの伝説 風のタクト HD」でしょう。このゲームにはMiiverseを生かした機能や、Miiverseを使ったメッセージ送受信システム「チンクルボトル」が実装されています。

インターネットの騎士たち

Miiverseはプレイヤー間のコミュニケーションを促し、誰にとっても楽しいプレイ体験をもたらします。この機能のいい所はWii Uに組み込まれていることで、私たちの側でサーバーや、アカウントシステムや、様々なウェブ要素を用意する必要がありません。そこで私たちは、Miiverseへの投稿機能をWii U版ショベルナイトに実装することにしました! この時点での目標は、同じステージをプレイしている他のプレイヤーと、快適かつシームレスに交流できる投稿機能を、このゲームに組み込むことでした。

そうしてブレインストーミングが始まりました。「マリオU」のように、ワールドマップ上に投稿を表示させる方法も考えましたが… ショベルナイトにはマリオUほど多くのステージはありませんし、1ステージの攻略にはもっと多くの時間がかかります。本編ストーリーをクリアするまでに、ほんの一握りの投稿しか見れないかもしれません! また私たちは、もっと具体的で適切なメッセージを表示させたいと考えていましたので、マリオUのMiiverse機能では大雑把すぎました。その頃の私たちは、ステージ内の特定の地点について投稿できるようにしたいと考えていたのです。ここまで言ったら、当時多くのゲーマーを魅了していた、あるゲームについて触れないわけにはいきませんね。よもや、ここでその名を呼ぶことになろうとは…!

Demon’s SoulsとDark Souls

別のプレイヤーが残したメッセージ。あいまいなヒントや罠、ときには重要な示唆を含んでいることも?

プレイヤー同士がメッセージを通して、助け合ったり邪魔したりできる「ソウル」シリーズは、プレイヤー間のコミュニケーションに革命をもたらしました。プレイヤーはゲーム内の特定の場所の床に、既存のメッセージの断片を組み合わせて、オンラインメッセージを書き込むことができます。こうしたメッセージは、他のプレイヤーがプレイ中の部屋にも表示され、情け容赦のないゲーム世界に一縷の希望をもたらしています。物体のすぐ横にメッセージを残せるため、プレイヤーは特定の事柄について、独創的かつ自由に書き残すことができます。

隠し要素やトラップの多いショベルナイトにとって、このアイデアは最適だと思えました。プレイヤーがショベルナイトの世界に、「メッセージオブジェクト」を設置できるようにできるかもしれないと考えたのです。

とはいえ… こんな有様では、すぐに画面がいっぱいになってしまいます…

小さなメッセージオブジェクトは良いアイデアのように思われましたが、これはこれで別の問題が…

このアイデアでは、小さなメッセージアイコンをそこらじゅうに配置でき、閲覧プレイヤーが接触したりボタン操作を行ったりすると内容を表示する仕組みを考えていました。しかし、このコンセプトにはいささか問題があります。プレイヤーはメッセージを読むためだけに、その位置まで移動しなければならないのです。プレイヤーはそれぞれのアイコンまで移動するか、専用のメニューで内容を見るわけですが、大して役に立たない投稿を読むために大きく寄り道をしたり、メッセージを読もうとしてやられてしまうかもしれません! これは当初の目標に掲げていた「快適」とは程遠いものでした。

もう一つの問題は、ゲーム世界がすでに物でいっぱいだったということです。私たちはピクセル単位で慎重に世界を作り上げてきましたので、このようなお邪魔虫を追加すると、ゲームの快適なプレイや視聴の妨げになります。また、どのプラットフォームにおいてもプレイ内容が変化しないことも重視していましたので、Wii U版にだけ奇抜なアイコンが登場するのは、その理念に反することでした。スクリーンショットを見て「ああ、これは○○○版のショベルナイトだね」と分かってしまってはダメなのです。画面と冒険の中心に、プレイヤーがいればいいのですから!

改善の余地

私たちはまず、プレイ状況や使いやすさといった課題に取り組もうと考えました。プレイヤーが何か物体を置くのではなく、ゲーム内の特定の瞬間や場所について「書ける」ようにするためには、どうしたらいいのでしょうか? その答えは、ほんの少し視野を広げたときに見えてきました。

ちょっと視野を広げてみると、ショベルナイトのステージが、すでに細分化されていたことに気がつきました。もちろん、タイル単位では細かすぎます! そう「部屋」で考えればよかったのです! 昔の2Dゲームをプレイしたことのある方なら、もうお分かりかもしれませんね。たとえばロックマンのようなゲームでは、1画面ごとに分かりやすいチャレンジ要素が用意されていました。

「ロックマン2における部屋。目標はただ一つ、「次の部屋に辿りつけ!」です。

新しい部屋に入ったプレイヤーは、すぐに問題と向き合うことになります。どうすれば次の部屋に行けるか? あのアイテムは取りに行くだけの価値があるか? あの敵をどうやってかわすか? …といった問題ですね。ショベルナイトのようなファミコン風のゲームでは、部屋から部屋に移動する際に敵やオブジェクトが消えるので、特にその概念が分かりやすいかと思います。

プレイヤーは、問題や目標や敵の位置といった要点を部屋ごとに把握しますので、それぞれの部屋がすでに話題や着目点になっているわけです。これは重要な気づきでした! そこで私たちは、Miiverseの投稿を部屋ごとに分類し、プレイヤーが今いる部屋の話題だけを見たり書いたりできるようにしました。これにより、プレイヤーは何かを設置する面倒から解放され、快適にプレイできるようになったのです。

メッセージは部屋ごとに分類されており、次の部屋に移動すると入れ替わります。

GamePadの活用

プレイへの影響を避けるにあたって、私たちはWii Uのもう1つの独自機能、GamePadとその画面を活用することにしました! タッチスクリーン自体は、すでにアイテムや装備のクイック選択に使っていましたが、そこにMiiverseへの投稿機能を加えたのです。かくしてGamepadは、Miiverse投稿へのアクセス、すなわち自分へのメモや他プレイヤーへの伝言を読み書きする、ダッシュボードになりました。そこで私たちは、この機能に何か実体感や意味のある、常に持ち歩く道具のようなテーマを与えたいと考えました。「掘り掘り日記」(原題”Digger’s Diary”)という名前は、そこからつけられています。

掘り掘り日記への機能追加

この機能が専用のタッチスクリーンを備えるようになったことで、グラフィックスタイルや機能を大幅に拡張することが可能になりました。投稿内容を小さくしてプレイ画面に収める必要はなくなり、プレイヤーはタッチスクリーン上を自在にタップすることができます。そこで私たちは、以下のような機能を追加しました。

アバター

通常Miiverseでは、投稿にプレイヤーのMiiアバターが付属します。投稿に人の顔がついていることで、コミュニティ感を盛り上げているわけですね! このMiiは、それぞれのユーザーが数多くのパーツを選んで、自分なりに外見を組み上げた物です。しかし、そんなMiiを他のゲームと同じようにショベルナイトでも表示してしまったら、8ビット風グラフィックの美学は崩れ去ってしまうでしょう。どう考えても変なことになります! 私は冗談で、Miiの顔を8ビット風に再描画する機能を追加したらどうかと言ったことがあるのですが、プログラマーの1人が「それならグラフィッカーがユーザーの顔を1人ずつドット絵で描き直せばいいだろ」と言ったので、すっかり話がややこしくなりました。しまいに双方が怒り始めたので、この案はボツになりましたが、投稿に個性を持たせるアイデアは捨てたくなかったので、かわりに登場キャラクターをアバターにしたというわけです。これはテストチームの間ですぐに好評となり、特定キャラクターのアバターを使って、その台詞や口調を真似て投稿するという愉快な遊びが流行りました。

キャラクターのグラフィックをアバターにしたことで、クリエイティブな遊びが生まれました!

ほかの投稿を見るボタンを追加

数ある部屋の中には、多数の投稿が寄せられる所も出てくるでしょう。しかし、投稿の表示が入れ替わる(シャッフル)には若干時間がかかりますので、もっと読みたいプレイヤーは退屈してしまう懸念がありました。この小さなボタンを追加したことで、プレイヤーは「掘り掘り日記」への投稿を自由に読み進めることができます。

投稿の奨励

投稿システムを用意しただけでは、機能として十分とは言えません。プレイヤーコミュニティにとっては、会話のやり取りが続くことも重要です。私たちとしてはプレイヤーの皆さんに投稿してほしいですし、できれば想像もしていなかったような新しい形で投稿してもらいたいと願っていますが、だからと言って、純粋にゲームだけをプレイしたい方の邪魔をしたくはありません。そこで… 投稿ボタンはいつでも押せますが、特定の状況下では黄色く点滅させて、投稿を促すように変更しました。ボスを倒した時や、何連戦もするような状況がそれに当たります。結局このささやかな演出に落ち着いたわけですが、こういうちょっとした工夫が、ゲームを長続きさせるのです。

そして完成バージョンへ!

プレイヤーがGamePad上で目にする画面のモックアップです!

そして「掘り掘り日記」は、ついに完成形になりました! これは他のプレイヤーのメッセージが表示される、簡潔で受動的なウィンドウです。閲覧するのも投稿するのも自由ですし、ほとんどプレイの邪魔になりません。各プレイヤーが投稿したメッセージはその部屋に登録されるので、部屋を移動するたびに、全世界から届いた新しいメッセージがGamePad上に現れます。

こういう機能を開発するのは珍しい体験です。これまで私たちは、ユーザーが何をするかを明確に想定できるゲーム機能ばかり開発してきました。一方、この機能のようなユーザー作成型のコンテンツは、実際にプレイしてもらうまで、どう使われるか分からないのです! 大規模にテストできない以上、何がどうなってもおかしくないわけです。

ボスによっては、ボス戦の導入画面にたくさんのファンアートが投稿されたりするのでしょうか? 隠し部屋はどれも詳細に書き記されてしまうのでしょうか? ジャンプアクションをプレイした経験のないプレイヤーは、コメントを手掛かりにして、上達できるようになるのでしょうか? 洒落やジョークは、どんな場所に書き込まれるのだろうか…?悩みはつきませんでしたが、私たちは現在もショベルナイトのコミュニティを温かい眼差しで見守っています! 長い記事になってしまいましたが、ここまで読んで頂いてありがとうございました。「掘り掘り日記」やMiiverseについてご意見やご感想がありましたら、ぜひ聞かせてください!